こいつは真っ白すぎてね、と青年は笑った。
 こいつは俺の知り合いさ。ああ、多分そいつも俺と同じ男なんだが、どうも女に見られがちなまっしろな肌をしている。それもとりわけ、何故か顎の下から首にかけてはまっしろすぎるもいいところなんだ。
「誉められることがおおいけれどね」
 青年の隣で黙って紹介されていたのはまっしろな肌を持つ少年のような人間である。温和な笑みを絶やさずに、両の掌をほっそりした体の前で重ね、ひっそりと上品に佇む。
「それがね、ひどいんだよ。ただ女の子に間違えられるなら仕方ないとはおもう。こんな幼顔だしね。でも、太ってると思われるのはどうかなぁ」
 こいつはね、見てのとおりまっしろだろう。まっしろすぎるんだ。だから世の中の闇という闇、影という影は奴の体においては消滅してしまう。奴の、とりわけまっしろな顎から首にかけての肌には、闇という闇は存在できなくなってしまうんだ。影も闇も逃げてしまうから、首と顎をわけてくれるものがいなくなる。そうすると人々は錯覚して、まるで顎と首が繋がってるように認識してしまう。このまっしろな男が、顎と首とが分かれることの出来ないほどに肉厚だと判断してしまうって訳だ。
「近づいてくれたら気付いてくれるんだけどね、遠目だとどうしてもね」
 月の無い夜道にて、黒い服に身を包んだまっしろな肌の少年の顎から首にかけての肌が、表情のついた花瓶のかたちに煌々と浮かび上がる。



2014-12-17