僕の神話:040
どんな歌を歌っても、どんな手紙を何度書いても、どんな絵を何枚描いても、どんな服で着飾ってもどんなひとに感謝されてもどんなつみをおかしても何度なみだをながしても「あなたのいのちはちりよりかるいのです」嗚呼どうしたらもう一度あなたに会える!
1月 12, 2015
僕の神話:039
やめてくれ、絶叫しながらぼくは剥き出しになったぼくの心臓に包丁をふりおろす。神さまはそんなぼくを静かな海から見つめている、見つめている、見ないでくれ、見ないでくれ、やめてくれ、ぼくは泣き叫び、心臓からはぼくのすべてが噴出する、涙と手がとまらない。
1月 9, 2015
僕の神話:038
必ず届けると誓った。出会ってから、ぼくの物語はすべてあなたのためだった。くだらない人生が火花を放ち硝子色。どうしたら届くのか、土を掘り吼える。あなたに届けるためならばこのいのちなどおしくないのだ。けれどしんだら書けないじゃないか。
約束を、返して。
1月 9, 2015
僕の神話:037
ただ、会いたい・痛い・気持ちいい・かなしい・しあわせ・きみがすき・こわい・なつかしい・大嫌い・わからない・ごめんね・ありがとう・さよなら・ほしいほしいほしい、
神さまがクラッカーを引いたのだ。彼がわらいぼくはおちる。おめでとう、今あなたは生まれた。
1月 7, 2015
僕の神話:036
なぜぼくがぼくであることを否定されねばならぬのだ。お前がいると不幸になると大声で言える君は偉くて、君を不快にさせたぼくが悪いのだろう。重しがのる。肺に鉛が詰まる。つらさは生半な感情じゃないのだよ。思うより、ずっと。――でも、ぼくとは、誰だったろう。
1月 6, 2015
僕の神話:035
治らない。直らない。傷口を包帯で巻いて口に薬を詰め込んでだきしめてぬくもりをつたえる。直らない。治らない。お願い息をして笑ってみせてお願い治って治ってどうして治らないの神さまお願い助けてあげて。
横に立っていた彼が笑んだ。「そのひとは、もう、」
1月 5, 2015
僕の神話:034
「誰も呼んでいませんよ」水星儀の引き出しをあければ友は怖い友は怖い友は怖い友は怖い。「安心してください、誰もあなたの名前など呼んでいない。そもそも知らないのです。あなた自身も知らないのだから」静寂。水のナイフを抱き締める。呼ぶ声が、聴こえる。
1月 5, 2015
僕の神話:033
助けて助けないで 嘆いて嘆かないで 忘れて忘れないで 愛して愛さないで 叩いて叩かないで 離れて離れないで 笑って笑わないで 「時計から涙の花束と翼が躍りきみが狂うその月の朝にあなたを迎えにゆきます」うそつき。
1月 5, 2015
僕の神話:032
降る、もの、それは目にまぶしく、それはいとおしく、なつかしく、とうといもの。生える、もの。それは足に絡む、いたみ、しかばね、ほのお、花。ぼくと神さまが沈黙だけを唇に乗せ、立っている。このほしは、さびしい。
1月 4, 2015
僕の神話:031
ぼくを見てくれ! ぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれぼくを見てくれ、
きみの視線しかほしくないんだ!
1月 4, 2015
僕の神話:030
彼はやさしくぼくの翼を剥いだ。ぼくの声帯を削ぎとり、鼻と口を塞ぎ、両の目玉をくりぬいた。腕がなくなった。歩けなくなった。ころしてほしい、そう言ったのに、いまだ心臓だけはそのままだ。
――ぼくは今でも、彼をあいしている。
1月 4, 2015
僕の神話:029
微笑みとともに首へじわり細い指が食い込んでくる。なぜ今頃こんなこと、ぼくの問いはひうひうとした風になるだけだった。だってあなたずっと望んでいたでしょう。刑法202。こんなに彼が慈悲深いのは、今日がさいごのひだからだ。うっとりとおちていく、月と太陽。
12月 31, 2014
僕の神話:028
触れ合うすべてが透明になるまえに、きみをだきしめてあげましょうと、そう微笑んだ彼の笑顔を、今でもぼくは明瞭に記憶していて、あの日と同じトランペットが響くこの夜、今あなたがいないという事実それだけが、ぼくはどうしても分からないでいる。流れるもの。
12月 26, 2014
僕の神話:027
神さまのために死ぬのをやめた、僕は緒の切れたこどものようで、浮いている。追っ手が来ないことに安堵し絶望する日が遠くなるのはいつだろう。神さまが消えたのに僕がここで夢を見ているわけはなんだろう。世界の終わりでずっと待っている。神さまは、もういない。
12月 17, 2014
僕の神話:026
くうどうのどうたいに神さまをつめこむ。くうどうのずがいこつに神さまをつめこむ。それをかぶってうっとりと思った。神さまあなたにあいたい。
12月 16, 2014
僕の神話:025
ぼくがまだ複数ではなかった頃、神さまは毎日一冊の本をぼくの頭に積んでいた。ぼくが複数になったあとは、どのぼくに本をやればいいのか迷い、挙句神さまは毎日たくさんのぼくに、それぞれ同じ本をのせるようになった。その本を複数のぼくの内の一人が、燃やしていく。
12月 16, 2014
僕の神話:024
ぼくが生きていることをぼくは知らないでいて
それを教えてくれた人がいたのだ
天地がひっくり返り ぼくは産声で海を割る
その人が伸び上がり 空を覆う大樹になる
その幹にしがみついて ぼくはひとり泣いている
懐かしさに涙があふれる
遠く大砲の音がきこえる
11月 29, 2014
僕の神話:023
あなたは今、しびとと会話しているんですよ。神さまのいつもの倦怠を孕んだ微笑をまっすぐ見られないぼくは、近頃頓に俯いてばかりだ。「神さまも死人なんですか」「当たり前です。存在しないのですから」こうして触れ合っていても、彼はいつまでも遠い遠い天体だった。
11月 25, 2014
僕の神話:022
「真のプライドとは貫き通すためだけのものではない。曲げてもいいほどの何かに出会ったときに、曲げるためのものなんです」神さまはぼくの頭に花冠を乗せながらそう言った。「あなたは大丈夫ですか」ぼくは顔をあげられないままで、ただじっとその声を聞いている。
11月 23, 2014
僕の神話:021
「はあ。嫌いなものがそんなに多いと、生きるの大変じゃないですか」神さまがぼくの脳を書き換えながら暢気に言う。誰のせいで。思うだけで唇は開かず、嗚呼どうやって生きろというのだ。神さまがやわく微笑んだ。「いやですねえ。生きろなんて、誰も言っていませんよ」
11月 9, 2014
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