2021.12//
ぬったりと水着うごめくバッグ持ち海で生まれたものとして帰路




2021.10//
誤ちも夢も記憶もいためればこんがりあなた色になる まずい




2021.09//
買いたての歌から香る君の部屋 一緒に聴いたこともないのに




2021.06//
恐竜が滅びなかったらよかったな敵わぬものに喰われる甘美
恋は荷物 持ち手がふたつ付いていて君と僕しか掴めぬ仕様




2021.01//
あまりにもゆっくり雪がおちてくる 僕から自由になったひとびと




2020.12//
蜜色の光ながして夜の中、横顔横顔すぎさってゆく




2020.09//
しあわせになれるだろうか、なれないな、いつまで経っても履きづらい靴
(染よだか@shimeso43さん「しあわせになれるだろうか」で始まる短歌ください)




2020.08//
はちがつのあじさいあなたに愛されずむずがるようにしがみつくのだ




2020.07//
紫陽花のことをいつだか話したね 何かが終わるように弓音
階段を上がっていけばご褒美に目眩のような青空ひとつ
起きぬけに拍手が鳴った、雨だった、今日もあなたの夢を見ていた




2020.06//
もうあんな遠くでひかっているからね五月生まれの約束とうそ
思い出がメニューにあるから入れない店は今夜も繁盛してる
とつぜんに吹く風のよう、思い出はいつも僕らを置き去りにして




2020.04//
夜一人こうかいしては眠れずに充電ランプが灯台のよう




2020.03//
楽しさを疑っているふたりきりアスレチックの吊り橋渡る
くださいとちょうだいならばちょうだいが上品だって言ってたの誰
みっつめのピアスホールの中にあるしつこい肉芽 きみのせいだよ




2020.02//
実際の歌よりずっと天上の音楽みたい記憶の歌は

たくさんの反実仮想の道たちよ 春の花なら桜をえらぶ
しっかりときみにさわれるげんじつがあっさりこわれるげんじつがいい
#短詩の風