2019.12//
幸せなふりしてわらう 肉まんや餡まんよりもピザまんがいい
わるいのはあなたじゃないよ大丈夫ケーキはナイフで切るものだから

いくじなし連作
心中はできない程度の好きだけど好きと言おうか考えている
会うたびに好きだと思う離れればそんなに好きでもないなと思う
なんとなくちょうちょみたいだなんとなくのあたりが無責任に浮かれて
たぶん好きだと思うけどあいまいはよくないよね、あっ、言ってしまった




2019.11//
失恋でやっと完成する恋はたぬきで読んだ手紙みたいに
もう二度と会わないだろう予感してタイマーで切れるエアコンの音



2019.10//
こいびとかどうかは今は言えないが知らない場所で死なないでくれ




2019.09//
変と書くつもりが恋と間違えて気づく そうです、これは恋です
端切れとか欠けた皿とか接ぎ木とか愛されるまで傷つかなくちゃ




2019.08//
食べてるかさみしくないかときどきは海に帰っておいで、にんげん
この夏もわたし一人のためだけの夏ではなくなる予感 うそつき
ストローを刺しましょうかのあとの音、失恋のとき鳴るファンファーレ




2019.07//
さいはてに避難している、足音とチャイムの音がずっとしている




2019.06//
昨日とはちがう日なのだと言うためにビールジョッキにアイスカフェラテ
これはあなたのためにちぎった心です煮るなり焼くなり好きにしなさい
泣きながら目覚めた朝にどうしても最後の会話が思い出せない




2019.04//
もうずっとやまない春をどうやってあなたは僕に産みつけたのか
籠よりは止まり木がいい僕ならばあなたひとりをいかせはしない
かけあった魔法が解けるその前にちゃんとデートをしている僕ら
無邪気とは 今なら私を殺せるね、なんて笑って寝転ぶあなた
あのひとがすぐそこにいるあの部屋で今僕たちがキスをしている




2019.03//
雪解けの道に寝転ぶスマートフォンぼくはそんなにわるいひとかな
嘘ばかりつくな地球儀あの頃は世界に果てがきちんとあった
わかってる、わかってるのに僕たちは殺しあうよね愚かなんだね
こんなにも日和がよくて百円はなくてあるのは薬ばっかり
生きること死ぬこと違いがないとして春がうまれる菜の花の先
公園の花見の客の魔法瓶いつもわたしはひとりこぼれる
いつかこの身が朽ちようとても愛に果てなし限りなし #都々逸
これからは毎日しゃべって聞かせてねあなたの国のアリスのはなし




2019.02//
風のなか君のかたちを確かめて繋いでほどけてあっ もう見えない   #短詩の風




2019.01//
かんぺきな雨に途方にくれているふたりいるには狭いホテルで
永遠の孤独という名の服、会場、演目、そしてわたしのいのち





2018.12//
天国でいくさが起きて目の前で次から次へ身投げする雪
わたくしのこころのただしさ示すためだけに募金の箱に十円
死ぬときのきもちになって目に映るすべて愛してしまう きらきら





2018.10//
いちめんのなのはなとまではいかないがきみの寝顔はじゅうぶん花野
人工の星を見ている大切なものがなにかを忘れぬように





2018.09//
夏風の右手の熱の思い出のしとろんしとろんあなたはだあれ





2018.8//
目にひかり腹にとどろきしんがりに酔いをのこしていま夏が死ぬ





2018.7//
もう何もなくすものなき十八歳、さみしさ泳ぐ夏の池にて
金メッキよろしくひかる相聞歌みたいな人生いきてしまった
明日にでもおれは死ぬんじゃなかろうか吸った空気がこんなに青い





2018.6//
片足できみをえがいて夏の浜ちちんぷいぷいこどくになあれ
シャンパンも白い衣裳も花束もふさわしいのは今じゃなかった #葬式に呼んでください





2018.5//
あの花もふとんもお湯もゆるせない今が昔になるのがこわい
安寧よ来いと唱えるあけがたのあなたの夢に香水ふって
あと一回いいねが増えたらふぁぼりつできみの誕生日がつくれるね





2018.2//
白、白、白、灰色、白、白、となえれば思ったよりも冬はにぎやか
ぬくもりがなつかしすぎた昨晩の ああ そうだった でほどける魔法
Spotlight(いつもの帰路でこの時間ぼくだけを照らす外灯ひとつ)
#短詩の風