なんでもかんでもオムレツにするのが好きである。もちろんプレーンのものもいいが、混ぜると何しろ色がいいと思う。食感も変わって楽しい。それだけで必要な栄養素をすべて摂取した気分になる。混ぜるものはそれこそ何でもよいのだった。オーソドックスなところで、コーン、トマト、納豆、ピーマン、にんじん、ツナ、他にも色々ある。肉類もいい。ベーコン、ハム、小さなウインナーソーセージ。私の家には卵だけは常備されている。他の食料は全部、溶いた卵でオムレツにして焼くためだけにある。私の料理はだんだんオムレツに支配されてくる。ナッツ、パスタ、白米、イカやエビやホタテ、じゃがいも、たらこ、カブ、私は味噌汁を作らない。チャーハンも炊き込みご飯も作らない。ラーメンもピザも食べない。煮物もやらないし揚げ物もやらない。全部、全部、オムレツにするのである。
友達が遊びに来たときにサバ缶とパセリを入れたオムレツをふるまった。友達は文句を言わずに平らげたが、あとで何かを考えていた。これはもうオムレツではないよね、彼女はしばらくしてそう言った。オムレツでなければなんだろう。光らないフライパンと光るフライパンがキッチンにひしめいている。友達は少し考えてまた口を開く。オムレツでなければ、キッシュかな。米を使うならオムライス、カニカマを入れるなら蟹玉、いずれにしても卵とじとしか。彼女はそう言ったあと、のんびりと紅茶を飲んでいる。私の料理が突然、漠然としたものになった。私は卵とじなど作っていないはずだった。そんなものは作れないからだ。私が今まで作っていたものはオムレツではなかったらしい。友達に言わせるとそうなるという。なんだか変な気分だった。猫だと思って飼っていたものがばけものだったと知ったような気分だ。ばけものであっても愛していることには変わりないが、面食らいはする。私はそれからもオムレツを、友達の言うところの卵とじを作り続けた。健康診断ではいつも異常なしだ。
たまごでできている 190915
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