私の恋人はオーバーだった。リアクションが派手なのだ。落ち着きがないというわけでは決してないのだが、何か話せば首を傾げ、肩を竦め、手を挙げ、ポーズをとる。いちいち大変じゃないのかと心配になるがそうでもないらしい。私の友人はというと彼に対して容赦がなく、気味が悪いと堂々と言うのだった。私もいずれそう思うだろうと、かつては思っていた。彼のおおげさなところを好きでいられるのは、恋をしている今だけで、いつか彼のふるまいにいやけがさして、私たちはだめになるだろうと、そう思っていた。実際はそんなことはなかった。私たちはまわりが驚くほど長い間一緒にいる。彼はトークイベントなどにひっぱりだこになり、そこではみんなが彼のおおげさな動きに注目した。舞台の大きさが、彼のおおげさ具合をうまく中和していた。舞台から私を見つけた彼は、呆れたことに片目を閉じてみせた。それは絵に描いたようにばっちり決まったウインクだった。彼の動きは風になびくカーテンのようで見ていて飽きなかった。彼は宮廷道化師で、私は暇を持て余した王族のようだった。
 その夜、ふたりで夕飯を作っているときに彼はふとこう言った。貴女がつまらない人生を送っていてよかった。私はためしに片目をつむろうとしてみたが、頬が引き攣っただけだった。

王と道化師 190621