300字SS

 鞄には穴が開いていてそれでもう何も出てこないのだった。私は私の鞄が修復できないことを悟ったが、しかしそれは不幸を意味してはいなかった。私は私の鞄といつも一緒だった、生まれたときから片時も離れず、ずっと一緒だった。眠っているときもその鞄はそばにあった。私の鞄にはさまざまなものが仕舞われた。思いもよらない、入れた自覚のないものが入っていることもあった。鞄はいっぱいになりつつも常に余裕もあった。私はいつだって中身を自由にとりだすことができた。その鞄にいつのまにか穴が開いていたのだった。そういえば、この鞄を作ったのが誰なのか、私に持たせてくれたのは誰なのか、私は知らない。このまま持っていこうと思った。



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「私と私の鞄」
一次 お題:鞄
200404 Twitter300字ss 企画さん参加作品。空白改行無視で300字。