300字SS

 彼女と私の落ち合う食堂、消灯後、細長いテーブルには誰かの落とした白菜がこびりついており、看護師たちがこの場所を避けているかあまりにも忙しいかを示していて、それでも誰かが私を呼んでいる、誰かが彼女を探している、しかし私はその声を求めておらず彼女も違う声を望んでおり、ひきずった寝間着の裾のとれない汚れはお揃いで、ほんとうは私たち、たぶん、とくべつなのだ。手をあわせて薬包を切り中身をまぜてまぜてまぜてずいぶん長いこと笑っていた。薬包の蝶が白く舞い、光もないのにここはいつしか春である。呼び出し音。実はもうせん前から痛む足首、すべての蝶を切り終え、春の粉をカルキ臭い水で二人飲み干した。外は春よりも遠い。



------------------------
「つつまれている」
一次 お題:包む
200201 Twitter300字ss 企画さん参加作品。空白改行無視で300字。