300字SS
 数年前から空と暮らしている。
 きっかけは、丘まで続く散歩コースにあるビル前の道路だった。アスファルトではなく、部分的に鏡張りになっていたのだ。踏んでも割れない地面には青空が映り、点々と雲が浮かんでは流れていく。これがほしい。ほしくてたまらない。気持ちを抑えられず、私は帰ってすぐに行動を起こした。
 自宅を大々的に工事して、屋根は透明な特殊ガラス製のものに、床は頑丈な鏡にしてもらう。その日から空との共同生活が始まった。雨の日も曇りの日も私は空と一緒だ。
 今や、空と暮らすことははやりにはやり、社会的ブームとなった。小高い丘から見下ろす街は、ガラスと鏡でできた家で埋め尽くされ、今日も地上は青空色だ。










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『にぎやかしき』 一次 お題「空」
 18/06/02 #Twitter300字SS 企画さん参加作品。空白、改行のぞいて299字。