フェルトぬいぐるみが人々に浸透して数年、私は好んでそれを作り続けている。今日は週に一回の手芸教室。隣にいるのは初心者のNさんだ。彼女のフェルトはどこのメーカーのものだろう、何を作っているのだろうと思っていると、彼女と目があった。慌てる私に彼女が微笑む。
「これ、特別なものなの。教室が終わったら教えてあげる」
無事に一作完成させ、それを握りしめて私は彼女についていく。到着したのは寂れたアパート。ただいま、と彼女が一室を開けた。
私の手からやっと完成したぬいぐるみが転げ落ちる。
「私の伴侶よ。体毛が伸びて止まらない病気でね」
目の前の巨大な毛玉は、彼女が教室で作るものとそっくりだった。
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『ひとりじゃない』 一次 お題「人形」
18/03/03 #Twitter300字SS企画さん参加作品。
改行空白無視で289字。
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