かんかんかん、遮断機がおりてゆく。
 夜十一時、私は近所の小さな踏切に行く。ここによく来るようになったのは最近の話だ。ざわめく人々、通り抜けた電車を目で追うこともせず前だけを見つめる私。遮断機が上がると、向こう側の人ごみに、ひとりぶん姿が増えている。
 その人と視線が合う。また数分後、電車が通り過ぎれば消えてしまう人。私の足は動かない。邪魔そうにする人々は無視して、私の目は彼だけを見る。私、来月中学生だよ。心の中で告げれば、永遠に三十歳のサラリーマン姿の彼は笑みを濃くした。午後十一時から数分しか会えない友達は、少し遠くで、褪せることを知らないまま。
 かんかんかん、遮断機が、おりてゆく。










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『シーン11』  一次  お題「時」
15/02/28 #Twitter300字SS企画さんに参加したもの。295文字。