300字SS

 連れ立って夜を歩く。住宅地はそしらぬ顔をしている。
 ポケットからラムネ菓子を取り出したいとこを見守る。ぴん、と駐車場のほうで何かが鳴り、その音のせいで固まったいとこに、木琴と鉄琴の双子の話を聞かせてやる。先程の音は、わたしたちの間で、留め金の外れた双子が転んでしまった音になる。
 容器から手の中へラムネ菓子が注がれるときいつも何かを打ち明けたくてたまらなくなるのだ。駆け上がってもどこにも着かない。途方にくれる。わたしたちはきっと、果てしなくこんな時間を繰り返しているのだろうに、思い出せない。なんということだろう。

 夜を吸ったラムネを口に含んで横になる。体がほろほろ溶けていくのを感じている。



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『良薬』 一次 お題「薬」
190202 #Twitter300字SS 企画さん参加作品。空白、改行のぞいて299字。50回おめでとうございます。