300字SS

 切符売り場にとあるものを差し出し、チケットを受けとる。
 それは日曜にだけ開く、もうひとつの遊園地へ行ける特別なチケットだ。豊かな家族連れや、未来ある若者ではなく、すべてをなくした者だけがそのゲートをくぐれる。
 幼い頃に田舎で机を並べた懐かしい面子が一同に会する。回転ブランコやメリーゴーランドから、白髪の目立つ人間たちが晴れやかに地上へ手を振る。アナウンスをするのも、事故がないか監視するのも皆、様々な施設や道端でつい昨日はしょげていた者だ。
 この日曜は誰にも邪魔されない。職を失い、家族に去られ、老いに耐える者たちの憩いはまだ終わらない。入場に必要なものの正体は、きっと誰でもいつか、分かる日が来る。










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『果て』 一次 お題「遊ぶ」
 18/05/05 #Twitter300字SS企画さん参加作品。空白、改行のぞいて298字。前に書いた「飾堂人生」と同じ世界のはなしかもしれません。